アイ・アム・ア・ヒーロー[2016] [映画感想]
鈴木英雄(大泉洋)は売れない漫画家。
一度はデビューしたものの、連載は打ち切られ、現在はアシスタント。
ある日、同棲中の彼女・黒川徹子(片瀬那奈)と喧嘩をし、
趣味の猟銃とともに部屋を追い出される。
徹夜仕事を終えて、帰宅すると徹子が異様な姿になって襲ってきた。
せまい部屋の中で、必死に戦う英雄。
ドアに噛み付いて歯がボロボロと抜けた状態の徹子に噛まれたものの、
出血はしなかったので感染には至らなかった。
徹子は転倒した拍子に頭部を傷め絶命し、英雄はどうにか難を逃れる。
行くあてもなく職場に戻ると、そこでは同僚たちが異様な姿に。
彼らの変貌ぶりに驚き慌てて職場を飛び出す。
すでに町中の多くの人間がゾンビウィルスに侵され、
通行人も、警官も、ゾンビだらけ。
まともな人間も、あっという間に襲われてゾンビ化していく。
原作漫画では、徹子が発症するまでにほぼ1巻を費やしていたと思う。
徹底的な日常の描写から、非日常の描写へとその変化をジワジワ描いていた。
原作漫画はとても面白かったけれど、映画化するにはボリュームがありすぎる。
それに対し映画は、発端と大きな山場をうまくつないだ脚本だと思った。
さすが野木亜紀子先生だ。監督は図書館戦争シリーズの佐藤信介。
主人公は、「英雄」という名前だが現実にはヒーローとは縁遠い内気な性格。
でも、そんな人間性がうまく作用して、生き残ることができたのかも。
映画化において、大泉洋はハマリ役だと思った。
(深夜番組の「水曜どうでしょう」を見たかぎり、リアルに独り言が多そうだし)
映画化にあたって、他のキャスティングもうまくいっていると思う。
ただ比呂美に関しては、有村架純ちゃんより杉咲花ちゃんの方がハマる気がした。
その他、登場するゾンビたちも、感染前の性質を残していて、
サラリーマンだったり、スポーツマンだったりの動作を
ゾンビ化した後も継続しているところが、原作の興味深い設定の妙だ。
ラストもいいところで切ったと思う。
本当は続きが見たいところだけれど、あえて見せないところが賢明。
この手の映画には珍しく、余韻を残して終わったところがナイス。
結局、原作はスケールが大きくなりすぎて
ラストはよくわからない終わり方になっちゃったから、
原作のおいしいとこだけ映画化するというスタンスもアリだなと感じさせた作品。
もちろん、原作を読んでいなくても十分楽しめると思う。
もし原作を忠実に映画化したら、前・中・後編の三部作になってしまいそう。
登場人物も多いので、制作費もかさむだろう。
その割に万人ウケするジャンルではないと思うので、大コケしたら目も当てられない。
このくらいの尺でまとめたところがベストな選択だと思いました。
そういえば、壮大なる予告編がすでにあったのだったか。
その辺のつながりは、本編を見ている間、ほとんど忘れていたwww
★★★★☆